長いお別れ
認知症とは、少しずつ記憶をなくしゆっくりと遠ざかっていくから、この題名、「長いお別れ」となったそうです。認知症は、長いお別れ。ゆっくりとゆっくりと別れに向かって進んでいく感じです。父・昇平(山崎努)の70歳の誕生日会に呼ばれた娘2人。夫の転勤で息子とアメリカに移り住み、慣れない生活に戸惑っている長女・麻里(竹内結子)と夢も恋愛もうまくいかず、思い悩んでいる次女・芙美(蒼井優)は、母・曜子(松原智恵子)から中学校校長も務めた厳格な父が認知症だと聞かされる。認知症の父とその家族の7年のお話。急に怒りだしたり、面白い本があると国語辞典を芙美に渡したりと、少しずつわからなくなっていくお父さん、自分に戸惑う当事者の気持ちも考えないといけないなと思いました。特に好きなシーンは、網膜剝離で入院したお母さん。手術後、目を回復させるために病室のベッドでうつ伏せの状態を義務付けられていました。そんな時、大腿骨骨折したお父さんが同じ病院に入院することになりました。お母さんは顔だけうつ伏せのまま院内を歩き、お父さんの病室に向かいました。顔があげられないので「お膝お借りします」とお父さんの膝にうつ伏せになりその背中に手を添えたところが大切な人はいつまでも忘れないんだと思ったから好きです。あと、いなくなったお父さんを探すのにGPSを頼りに遊園地を探すお母さんと娘たち。昔、傘を3本持って遊園地に迎えに来たことがあるとお母さんから聞かされる。認知症になったお父さんはこの日も、3人分の傘を持って遊園地に来ていました。メリーゴーランドに乗っていたお父さん、娘たちの「おとうさーん」の呼びかけに、にっこりする所が微笑ましかったです。お父さんのなかで記憶は過去と現在をぐるぐる巡っていて、忘れる日もあるけれど、なくなったわけではないんだなと思いました。認知症は家族も本人もつらく、関わり方について考えさせられる映画でした。