ハドソン川の奇跡
「ハドソン川の奇跡」の発表は2016年も「クリント・イーストウッド監督ここにあり」と衝撃を受けました。偉大なキャリアの中でも安穏としないハリウッド映画界のスーパースターに生涯現役の畏怖さえ感じます。2009年の奇跡的な生還劇 USエアウェイズ1549便不時着水事故を知るきっかけになりました。逆にこの航空事故を強く報道しない日本のマスコミに疑問を感じます。日航ジャンボ機墜落事故を知る世代も事故を風化させてしまった感じさえします。主演はトム・ハンクスでチェスリー・サレンバーガー機長(愛称サリー)を演じています。副操縦士のジェフ・スカイルズは機長の指示を待つことなく速やかにマニュアルを開きます。エンジン再始動のために最善の処置を魅せます。USエアウェイズ1549便が鳥の群れに接触し鳥がエンジンに吸い込まれて2つのエンジンが共に機能を停止するというありがちな事故原因です。事故の状況は推力を失った機体を操縦して出発地のラガーディア空港へ引き返そうと試みます。しかし、高度が低すぎて他の空港への着陸も不可能となります。サリーはやむを得ずハドソン川に機体を着水させることを決断します。サリーの巧みな操縦により着水の衝撃でも機体が分解せずに大型旅客機の不時着水という大事故でも1人の死者も出なかった。シンプルに機長サリーな英雄物語のような感じです。この映画の面白さはここからです。事故調査委員会の調査のシミュレート結果では1549便はエンジンが動いていてラガーディアにも他の空港にも着陸が可能だったという報告が出ます。サリーとスカイルズは「あり得ない」と否定しますが二人は疑惑の人物となっています。実際は事件は瞬く間にアメリカ全土に広がりふたりは英雄視されています。ジョージ・W・ブッシュ前大統領から直接連絡があったり、バラク・オバマ大統領から晩餐会に招待されたりしています。特筆すべきはイーストウッドは本作の撮影のために本物のエアバスの機体を購入したらしいです。これらの情報が日本のニュースで伝わらないことに危機感を感じました。