遊星からの物体X
最終更新:2022/9/20
ここに出てくる「物体」とは他の何にも形容し難い物体である。無数の触手、昆虫のような足、生首、骨や内臓のゴア表現、気色悪くうごめく血液。ここまでもかといわんばかりにありとあらゆるホラー要素を詰め込んでいる。とくにこの物体の最も恐ろしいところは「潜伏」である。何事もなかったように味方を装うから発見しづらい。そして突然正体を表し無防備な仲間たちを殺戮していく。南極という閉鎖的な空間のなかで疑心暗鬼になっていく人間たちの描写がさらなる恐怖を引き起こしていく。私がこの映画をみたときはまだ小学生だった。映画『南極物語』で感動したあとに『遊星からの物体X』をみたのもあって憂鬱な気持ちになった思い出がある。視聴したあとベッドの下から触手が伸びてくるんじゃないかと怖くて眠れなかった。大人になってから再び『遊星からの物体X』を観たけどやはり気持ち悪かった。しかし子供のときと違ってある程度冷静に観ることができ名作だと再評価するようになった。「物体」の作り込みが気色悪いほど芸術的であり、触手や足が一本一本緻密に動いている。そしてリアルな質感はCGを見慣れた現代人にとっては新鮮ですら感じてくる。「物体」の動きにリアリティを感じるのは実際の生物をつぶさに観察していたからかもしれない。「物体」を観察するだけでも見ごたえのある映画といえるでしょう。この映画はThe Thing from Another World(遊星よりの物体X)のリメイク版で、英題は「The Thing 」すなわち「物体」である。それだけ「物体」としか言い表せないものだと感じさせられる。