ボーダーライン
最終更新:2022/10/3
エミリー・ブラントがメチャクチャな捜査に巻き込まれてぐったりしていく様がとても良い。ジョシュ・ブローリンのクセのある役どころも面白い。彼のバックグラウンドは語られないが、非合法な捜査、拷問などを平然とやってのけるようになるまで色々あったのだろうし、そうしたものをとうに乗り越えてきたような「図太さ」が演技に表れていて、説明がなくとも「ヤバいヤツ」と分かるところが良かった。ベニチオが素性不明のメンバとして関わっているが、真相は復讐を果たそうとする「個人」だったことにびっくり。アラルコンの豪邸に忍び込むまでの手際の良さ、アラルコンの家族をもためらうことなく殺す冷酷さはスカッとした。エミリー・ブラントは、自分に銃を向けてきたベニチオに、ついに反撃することができなかったが、コレは彼女が最後まで「法を遵守する人間」であり、ベニチオやジョシュ・ブローリンのような連中とは生きる世界が違うのだ、ということが表現されている。バルコニー越しのショットは二人の「ボーダーライン」が上手く描写されていて面白かった。最初ちょっと分かりづらいけど、時々映るメキシコ人家族のシーンは、終盤でベニチオが利用する、買収されたメキシコ警察官シルヴィオの家族。メキシコの麻薬事情がどこまでこの映画どおりなのかは分からないけど、こういう風な光景もあるのだろうなーと思わせるラストだった。 この作品がアメリカで高い評価を受けて、実際人気もあって、続編まで制作されている、というのはビックリ。 この映画は、心理的スリルを味わうエンターテイメントとしてはよくできているけれど、ユーモアの要素が全く無いし、こういう作品が批評家だけでなく大衆にもウケること自体、アメリカ社会も病んでいるというのか、行き詰まってるなあ、という感じがした。