日本で一番悪い奴ら
最終更新:2022/9/20
実際に起こった北海道警察の刑事の不祥事を取り扱った作品だが、純朴な好青年が警察という「組織」の中で渦巻くドス黒いものに巻き込まれて、ただひたすらに落ちぶれていく主役を演じる綾野剛がとてもハマり役だと感じた。どんな役も演じられる役者だけども、個人的にはやはりダークサイドの方が似合っていると改めて感じた。脇を固める先輩刑事役のピエール瀧や暴力団幹部役の中村獅童など、とにかく「裏社会」の空気感を見事に作りきっている。『事実は小説よりも奇なり』という言葉がピタリと当てはまるような映画で、こんな作り話みたいな出来事が本当にあったんだと思うと、それだけで戦慄が走る。本来、規律を守り、法規にのっとって地域の治安を守る立場にある警察が平然とそれを破り、自分たちの点数稼ぎの為だけに時には周囲を巻き込んで奔走する姿はあまりにフィクション過ぎるノンフィクション。でも、潜入捜査の現場で餃子耳である所から勘づかれて取引が一気にご破算になりかけるシーン等は、柔道で慣らしていた作者らしいエピソードであり、そういうリアルさが寸前のあたりでリアリティを保っている気もする。今のご時世、コンプライアンスやら何やらでどのエンタメも妙に縮こまってしまいがちな中、題材からしてハードブラックな部分に切り込んでいるけれど、見ているうちにグイグイと惹き込まれてしまう“魔力”がこの映画にはある。そして、そういう映画を欲している自分がいることにも気付かされた。