LAMB
最終更新:2022/10/13
アイスランドの羊飼い夫婦の間に舞い降りた羊と人の獣人。アダと名付けられたその赤子は、夫婦に大切に育てられるが……という奇妙なストーリーで始まる物語が「LAMB」です。とにかくこの、羊と人の子アダちゃんが可愛い!可愛らしく、明らかに人間ではない子だからこそ常に不安が観客につきまといます。本当に我が子として育てて問題がないのか。そしてこれは、新しい不幸の始まりなのでは?もう絶対に大切なものを失いたくないという妻・マリアの気持ちがアダへの奇妙な執着と愛情に変化していく様子が恐ろしいと同時に、非常に共感できる部分です。だからこそ、衝撃のラストに唖然としてしまうこと間違いありません。これは、単なる自然参加ではなく「愛と喪失」の物語です。愛おしい子を亡くしてしまった夫婦のもとに現れた、愛らしい「人ではない赤子」。姿からは邪悪さを感じることが出来ず、必死に「この子は人ではない」という奇妙さから目を反らしながら生きていく様子が胸を打ちます。しかし、アダを生んだ羊は毎日窓際からアダを呼び、クリスマスの夜には何かが羊小屋を襲っているのです。不吉な予感を感じさせながらも、アイスランドの厳しく、美しい自然の描写と共に物語が進んでいきます。もし自分が最愛のものを手に入れてしまったらどうするか?それが明らかに人外のものだったら?という疑問を抱かずにいられません。最後までしっかりと結末を見てほしい作品です。観客も絶対にアダを大好きになるはずですから。