宇宙戦争
最終更新:2022/10/3
まず、一番の魅力は「見せないSFスペクタクル」という観点でしょう。これは、おそらくほとんどの映画批評家やSFファンが言及している点ですが、要は「エイリアン、ドカーン!!怖いだろー!!あははは!!」というタイプではなく、姿形が一向に画面には現れないにも関わらず、まるで目の前で戦っているような、非常に怖い緊迫した世界に没入してしまうという意味です。スピルバーグ監督の「見せない恐怖」は『ジョーズ』にも見られるように、非常に洗練された演出技術が垣間見えます。音楽やカット割りの力もありますが、そもそも「宇宙人」という敵をあまり出さない、戦闘シーンがほとんどない、という演出が巧妙なんです。この映画、終始ずっと市民(トム・クルーズ)が逃げ惑う映画なんですよね。 米軍兵器とトライポッドによる全面対決!みたいなシーンはないですし、あったにせよ、画面から意図的に隠しているように感じます。 そこが個人的に好きな演出ポイントでもあります。最後は、皆さんもご存じの通り、微生物(原作ではウィルス)によってエイリアンはあっさり死んでしまうので、当時は賛否両論が激しかった作品だと聞きます。やはり、ハリウッドは夢を売るのが仕事なので、「どうにか地球人や主人公(トム・クルーズ)がやっつけて爽快!」という展開を予想していたのだと思います。題名的にも、まるで「宇宙で戦争するお話」感があるので、原作を知らない方からは多くの不満があったのも当然といえば当然でしょう。それをあの皆大好きスピルバーグに裏切られ、あっさりとしたエンディングに「こんな終わり方あるか!!」と思った観客は少なくなかったはずです。