友だちのうちはどこ?
最終更新:2022/10/13
『友だちのうちはどこ?』は、アッパス・キアロスタミ監督の、イランの映画です。お話自体は至ってシンプルです。地味で、お話の中に、大きな盛り上がりがあるわけでもありません。特別なことは何一つ起こりません。友達の宿題ノートを間違って持って帰ってしまった少年アハマッドが、ノートを返すために、遠くに住んでいる友達の家を探し回るだけのお話です。しかし、シンプルだからこそ心に響く映画です。主人公のアハマッドが友達の家になかなか辿り着けず、泣きそうになっている姿がとても可愛らしく愛おしくなります。だれもが子供の頃に経験したであろう不安の数々。夜の暗闇や、姿なき犬の鳴き声への恐怖。幼い子供にとっては、不安がいっぱいです。そんなアハマッドの気持ちが、手に取るようにわかって思わず応援したくなります。しかし純粋なアハマッドに対して、周りの大人はろくにアハマッドの話を聞きません。そんな大人たちを腹立たしく思いながら、自分もそんな大人になってはいないかと考えさせられます。大人になるにつれ、怖いものが減るかわりに、子供心を忘れてしまっていることに気づかされます。フィクションでありながらも、ドキュメンタリーを見ているような気持になるのも、この映画の特徴だと思います。また、訪れたこともないのに、何故か懐かしさを感じるイランの風景が素晴らしいです。ラストは感動的で、終わるのが名残惜しく感じます。ずっと見守っていたくなるような映画です。